2021.11.10

11月7日に群馬の宇田川師範代からのいきなりのラインだった。

師範代が引退して以降、久しぶりの連絡だった。

開いて見てみると金子さんが44歳という若さで亡くなったと。

最初は誰それ?て感じだった。

私の知ってる金子さんは第31回全日本チャンピオンの金子さんだ。

私の知っているのは彼だけだ。

だってその金子さんは私より8歳も若いし、まさかなあと思っていた。

電話で確認してみると、まさかのその金子さんだった。

 

私は過去2度彼とは対戦していて、2度とも負けている。

全日本のチャンピオンにはなったが、正直彼にそんな強さや怖い印象はない。

負け惜しみではないが。

現に戦った後輩たちも同じ意見だった。

なんかズルズルとした試合運びで、終わってみると判定負け。

みなそんなパターンで負けている。

いわゆる金子マジックだ。

戦うスタイル、タイプ的には私と同じ感じだ。

本人も私とは噛み合っていたと言っていたぐらいだ。

技も一発をもっているわけではなく、突きと下段、たまの後ろ蹴りぐらいか。

体格も私のほうが一回り大きかったろう。

そんな筋肉質でもなく、それほどフィジカルも強く感じない。

防御も特別うまいわけではない。

殴っていても体が柔らかい。

なのにあれよあれよと上に駆け上がっていく。

では彼の強さとは?

豊富なスタミナと粘り強さ、打たれ強さではないだろうか。

とにかくねちっこい組手だった。

最初は神奈川県大会の準々決勝であたった。

この時はあきらかにスタミナ不足で完敗。

2度目が全日本の準々決勝戦。

記憶では序盤は私の方が優勢に運んでいたとは思うが、後半粘り負けしてしまって失速したとこ畳みかけられ敗退していたと思う。

まあここでも完敗ということだ。

その後、茨城でも4強の中の一人、技巧派三浦君までも破って決勝にいっている。

三浦君はリーチがあり、前蹴りなど中心に組手を組み立てる。

離れてもよし、近づいてもよしとバランスの取れた良い選手だった。

金子さんにしては非常にやりにくい選手だったのではないだろうか。

 

全日本の準々決勝で2度目の対戦。

俺の知り合いが撮った写真だから金子さんの顔が分からないが、これしかないゴメン。

死因は肝臓を患ってのことらしい。

正直、彼は私より若いのに引退時期は私と同じぐらいかと思う。

いくら空手をやって体を強くしても、病気には敵わない。

幸い私は今のところ大きな病気は患ってはいないが。

3年前足を折ったぐらいか。

私も50年生きてきて、色々な経験をしてきた。

この年になると健康に生きるには、若い時の頃のような無茶は無謀だ。

空手を長く続けるには、普段の生活に気を配らなくてはならない。

そして何もよりもケアが大事だ。

稽古方法も色々と模索中だ。

ただ鍛えるだけではダメだ。

今の自分にあった強度の、そして進化できる稽古方法でなくては。

 

正直、金子さんとはそこまで親しくなかった。

大会後に少し話す程度だ。

世界大会後の翌年の全日本では、金子さんは序盤で敗退していた。

私は運よく上位に食い込んだ。

歳は重ねたが、まだ伸びしろがあったようだ。

金子さんの敗退の原因はプライベートの影響もあったらしい。

大会後「金子さんとやりたかったよ。」と私はリベンジを兼ねて彼に言った。

「俺もやりたかったです。」と彼も答えてくれた。

しかしそれ以降は群馬では世代交代があったようで、私の現役時代には全日本に出て来ても彼の名前が上位に連なることはなかった。

結局3度目の対戦をせず、お互い引退した。

 

正直、第31回の全日本からは前回までいた本当の意味での強豪選手はごそっと抜けていた。

みな強い方たちは、さらなる上の舞台へと行ってしまったのだ。

だから私みたいな駆け出しでも上位になんとか食い込めた。 

ただ運が良かったのだ。

しかしこの大会での経験は私にとって空手人生を大いに変えてくれるきっかけとなった。

こういう大きな舞台で戦えたことが非常に良い経験になった。

今の指導にも役立っている。

だからこそこのような舞台で、大いに殴りあえた金子さんとは親しくなくても戦友だったと思ってしまう。

そんな彼がその若さで亡くなったと聞いた時、胸が締め付けられた。

私は去年から小美玉道場をだしてからは、宣伝も兼ねて頻繁にSNSに投稿している。

そんな記事を見たからか金子さんから、いつか自分も若い子に技術を教えたいとコメントがきた。

そんなことを言っていた矢先だった。

 

 

金子さん~

ホントはさ~今頃、お互いの育てた弟子が戦っていたかもね。

俺さ~金子さんの分までいっぱい子供たちや道場生に空手教えるからね。

だからもうちょい迎えがくるまで、この世で頑張るわ! 

いつそちらに行くかは分からないが、あの世でまた極真ルールで殴り愛ましょうよ!

俺、負けっぱなしで悔しいじゃん。

ちゃんと鍛えて待ってなよ、金子さん。

俺もこっちでは修行を怠らないよ。

今度は俺がぶっ飛ばしてやるからな。

だから、さよならなんて言わないよ。

俺の事、忘れんなよ!

でもね早すぎだよ、金子さん。

ありがとうね、金子さん。

またね・・・・・・・・

合掌。

戦友 金子将章に捧げる。押忍!