2024.09.04

【基本の稽古と試合の稽古】

正直、現役時代の若い頃は基本はほぼさぼりまくった。

最初の2年ぐらいの茶帯ぐらいまでは基本稽古も一生懸命やった。

しかし、だんだん帯を取るまでは仕方ないという感覚になっていった。

基本の稽古がどういう風に組手に繋がるのか分からなかったからだ。

 

そのうち大会選手を本格的にやると決めると自分なりに試合に勝つためにはと考えるようになった。

しかし仕事柄(料理の仕事のため)道場にも週1しか行けない。

ウエイトやミット打ち、組手をバンバンやっていたほうが強くなっていったからだ。

そうフィジカルが上がれば勝手にある程度は強くなれるのだ。

基本に時間を費やしても意味がないと当時は思っていた。

選手は正直みんなそう思っていたのではないだろうか。

そして基本の大事さを教えてくれる人もいなかった。

技術を教えてくれる人もいなかった。

みな自分が強くなることしか頭になかった。

すべて創意工夫だ。

漠然と稽古に来ては繰り返し繰り返しの基本稽古だけではダメだと思っていた。

基本に意味など見出せなかった。

 

道場稽古でも組手稽古はある。

基本稽古は苦しいだけですむが、組手はそれ以上に痛みと恐怖が伴う。

白帯の頃、組手がやりたくてしょうがなかった私は、果敢に先輩に挑んだ。

その頃の水戸本部は今ほど甘くはなかった。

いや甘い甘くないという基準ではない。

今風で言うと先輩からのパワハラなど当たり前だ。

コンプライアンス?なんだそれ?みたいな感じだった(笑)

当時の水戸本部の一般部稽古には子供はいない。

なので忖度するような稽古など一切なかった。

下の帯だから手加減?

とんでもない、下の帯はみな上の先輩の実験台または自尊心を高めるための人間サンドバックだ。

組手の最中「押忍、参りました」と言わなかったら、壁に押し付けられようが鼻血を出そうがおかまいなしに殴られた。

頭を蹴られて脳震盪や肋骨を折られるなど日常茶飯事だった。

そして先輩はルール守らんし・・・・・・

こっちがルールを守っていても先輩はお構いなし。

金的に当たろうが顔面を殴られようが、急所に当たっても受けれない避けれないのは、お前が悪いんだと言わんばかりの雰囲気だった。

掴まれたり、投げ飛ばされるのも関係ない。

「受けね~からだよ」

ある黄色帯の先輩が言った。

基本で習ってるだろ!

はっ?基本なんてどうやって使うんだよ。

基本の受け方など形だけにすぎない。

なにせ実践での受け方など教えてもらえないのだ。

すべての攻撃を体で受けるしかなかった。

下段の受け方?なんだそれ?どうやんの?

散々、先輩に殴られ蹴られた挙句、終わってからありがとうございましたと言うのもおかしなもんだ(笑)

試合や組手をやりたくて入ったのだから、楽しいと言えば楽しかったが、そのころはまだ恐怖と恨みしか感じられなかった。

今考えると、当時の青・黄・緑あたりの先輩はえげつない。

中途半端に強いものだから加減もできんし、黒帯には当然かなわんもんだから白帯あたりはいい的だ!

ボコボコにできるから楽しくてしょうがないんだろうな~

私が白帯の頃、最初に立てた目標は【絶対コイツら、こ○すまでやめん】という、素晴らしいお題が決まった。

そのモチベーションで30年続いたと言っても過言ではない(笑)

足を引きづりながら帰って、心配される彼女に意気揚々と【これが極真なんだよ】と誇らしげに語っていた若い頃が懐かしい。

おっとまた話がそれて先輩への恨み節みたいになっちまった(笑)

とにかく試合で結果を出したかった私は、道場稽古に来て基本をやるなら、試合に近い稽古をしなければ上にはいけないという答えを出した。

だから基本など必要ないと勘違いをかましていた。

 

30代半ば指導員になった私は、年齢的にも第一線を離れるようになっていた。

ポッカリと目標がなくなってしまった私は、漠然と指導をしていた。

後輩たちの選手稽古を見ながら、自分も相変わらず一緒にやるのが好きだった。

なんで三戦立ちで基本をやらねばならないのか?

なんで前屈立ちで移動しなければならないのか?

なんで後屈立ちや騎馬立ちのような形になって突き蹴りしなければならないのか?

基本は鍛錬だからか?

それなら空手でなくてもいいんではないのか。

今だ基本の意義が見いだせないまま指導、いや空手をやっていた・・・・・・・

誰か教えてくれ、いやヒントだけでも。

いくら考えても答えが出ないまま数年、いや数十年が過ぎていった。

 

小美玉地区道場
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